凍えるような極寒ロシアで、クマたちは半分凍った湖を泳いで渡ろうとするものの、思ったとおりには進みません…
自然のドキュメンタリー映像を見ていると時間があっという間に過ぎてしまう時ってありますよね。今回紹介する子熊と母熊のストーリーはそんな、時間がすぐに過ぎてしまうような物語です。
愛と喪失
このストーリーは、思いがけない救助が駆けつけるまで引き裂かれる家族の愛、喪失そして希望に関する物語です。
母熊は、二度と子供に会うことが無い事を知りながら、凍った湖に置き去りにすることを余儀なくされてしまいます。突如現れた漁師達が救助に駆けつけるものの、命は助かるのでしょうか。
極寒の湖
物語の舞台は、ロシア北西部にある極寒のヴィゴゼロ湖。気温は氷点下20度まで下がることは日常茶飯事、人気スポットとは到底言えず、人間が行くことはめったにありません。
湖は大きすぎる上に極寒であるため、人や動物が安全に泳ぐことはできません。反対側まで生きたまま横断するのは事実上不可能なのです。2匹の子熊が渡るなんて言うのは明らかに無謀な訳です…
道の途中で
理由は定かではありませんが、ある母熊が2匹の子熊を水辺に連れて行きます。食べ物探し、寝床探し、とにかく理由は私たちには分かりません。
さらにどういうわけか、母親は水に飛び込むことにしたのです。この行動は母自身の命だけでなく、子の命も危険にさらす行為にも関わらず…
危険な選択
その後間もなく、水に飛び込む選択が大きな間違いであることが分かり、2匹の子熊はなんとか流されないよう氷のように冷たい水で生きようと必死に母親の背中から離れないよう努力します。
湖の真ん中に到着する頃には、もう背中に捕まる気力は残っておらず、湖の真ん中で母親から手を放し、母親からどんどん離れていきます。
最悪の状況
ここからパニックが始まります。基本母熊というのは非常に過保護で、自分たちの力で子供たちを守るためにあらゆることをしますが、この極限状態で母熊ができることはあまりありませんでした。
そこで、母熊は子供たちがどんどん遠ざかっていく中、置き去りにし、自分は泳ぎ続けるという悲痛な決断をします。
強い流れ
水の流れは母親にとっても強いもので、子供の方に向かおうにも流れが強すぎて戻ることができない状態です。自分自身、向こう岸に到着できるかどうか分からないような状況だったのです。
最後の力を振り絞り、母熊は岸に到着しますが、極寒の周りを見渡しても子熊たちはいません。
孤独で無力
一方、2 匹の若い子熊は、凍えるような水の中をなんとか泳ごうと必死。自分たちの母親がどこにいるのかも知らずに…
この時点で水泳経験に乏しい彼らが生き残る可能性はほぼないに等しく、凍えるような冷たさの水と流れの強さがさらに押し寄せてきます。
命のリミットは刻々と近づいてきており、冷たい水がゆっくりと足を凍らせ始めている間、子熊たちはさらにパニックに。彼らが感じた恐怖は計り知れません…
氷のように冷たい水に閉じ込められ、母親を探しながら溺れかける…骨が凍るようなつらい思いだったことでしょう。
子熊たちはどうしようもなく周りを見回し、母親を探します。安全に泳げる場所はないだろうか、希望を失い始めたちょうどその時、何かが地平線に現れます…
2人の漁師がたまたまクマを発見したのです。最初は、母熊がいない事に気づきませんでしたが、状況を理解するとすぐに行動に移す必要があることに気づきました。
ボートが近づいたとき、もう残された時間は多くない事を理解します。子熊たちは頭を水の上に保つので精一杯、漁師は水から引き上げるためにできるだけ早く解決策を考えなければなりませんでした。
水辺で疲れ果てた母熊は、ボートが子熊に向かって走るのを眺め、漁師から子供たちを守るために、水に飛び込むことを考えているのでしょう。
漁師はまず母親が近づかないように注意します。このサイズのクマなら、2人の男性を倒すことなど簡単です。母熊を監視してはじめて子熊を助ける事ができると漁師は知っていたのです。
男性は、子熊たちを水から出すために最良の解決策を考えなければならず、その方法は安全なものでなければなりません。
子熊たちは小さいものの、野生動物。襲われる可能性は0%とは言えないわけで、漁師たちはスマートに計画を立てなければならないのです。
漁師の一人がたまたまカメラを持っており、この信じられないような光景を記録するために、動画撮影を始めました。
最終的にキャプチャされた映像は驚くほどの光景で、動画を回すというアイデアは吉と出ます。水中の子熊の隣でボートを止めた瞬間に撮影を始め、すぐに1匹が水から出ようとします。
疲労が溜まっている子熊は自力でボートに乗ることができず、どんなに頑張っても船に乗ることができませんでした。
そこで漁師たちは行動を起こし、釣り道具を使って子熊たちをボートに乗せることに成功します。
子熊をボートに乗せるのは非常に困難なミッションであり、経験豊富な漁師だったからこそ実現できたといっていいでしょう。
ただし、漁師が安全であるという訳ではありません。ボートに持ち上げようとする際に、暴れて襲われてしまう可能性はまだあります。
成功するのか?
最初はうまくいったように見えましたが、漁師たちは子熊に噛まれるのを恐れ、自らの手で触る事はせず、子熊が自力で立ち上がることができるように働きかけます。
しかし、何度試みても、子熊はボートに乗ることができず、結局可能性のある方法は1つ、漁師が自らの手で子熊を乗せるという方法でした。
漁師はクマに噛まれるというリスクだけでなく、重さで前に傾いた場合、水に転落する可能性もあります。2匹のパニック状態の子熊と一緒に水に落ちるというのは死を意味しています。
漁師はなんとか子熊たちが協力してくれることを祈る事しかできません。
その次に起こったことは本当に信じられないもので、お互いに一言も交わすことなく、漁師と子熊は協力し始めたのです。まるでお互いが何を必要としているかを正確に理解しているようです。
漁師は子熊を助けるために腕を伸ばし、危険な計画を始めようとしていました。
後から考えると簡単に聞こえますが、その瞬間はアドレナリンに溢れているため、確実に計画を遂行するのは困難です。
漁師の一人がクマを水からすくい上げるのにちょうど十分な大きさの漁網をつかみます。通常、大きな魚を乗せるために使用されるものですが、ダメ元でクマを救助できないかと考えたのです。
網がこれほど重いものに耐えることができるのかと恐れていましたが、これ以上のツールはもうどこにもありません。これが生と死を分けるのであるならば、網が壊れたとしても後悔はありません。
疲労困憊でほぼ瀕死状態の小さなクマから救出しようと考え、ネットを子熊の後ろに投げ入れます。
子熊を網に入れる事には成功したものの、まだ安全な状況とは言えません。漁師は、子熊を乗せている間、傷つけないようにする必要があります。
それに加えて、子熊が攻撃的でない事を確認しなければならず、パニックに陥る可能性も否定できないのです。そうなってしまった場合、計画は最悪のエンディングを迎えることになります。
漁師はこの時点である疑問を思い始めます。ボートに1匹の熊ではなく2匹も乗る…大丈夫なのだろうか…
一方、氷のように冷たい水の中に2匹の子熊を見捨てることはできず、漁師は自らの命を危険を冒すことに決めます。ボートに乗ったら次にクマを落ち着かせる方法を見つけなければなりません。
実際、子熊は思ったよりも重く、全力で子熊をボートに乗せようとしましたが、子供サイズの熊であった事が不幸中の幸いです。
ちなみに成長したクマの平均体重は約 590 キログラム、その重さであったら間違いなく漁網は壊れていたでしょう。
あと少しだ!
幸運なことに、漁師たちは重労働と悪天候には慣れていましたが、熊をボートに乗せるというのはそんな彼らにとっても過酷な作業です。精神的にも肉体的にも全力で戦わなければなりません。
長く激しい戦いの後、ついにボートに小さなクマを乗せ、1匹に多くの時間を要しましたが、目標に一歩近づきます。
1匹救ったからと言って終わりではありません、もう1匹はまだ水の中です。もう1匹はすでに何回も水に沈んでいて、浮かんでいるだけでエネルギーを使い果たしていました。
その上、ボートは1匹目を救う間に漂流しており、もう一度子熊がいる地点に戻らなければなりませんでした。
しかし、漁師たちは1匹救った事から、2匹目に自信を持っていました。難しいことは重々承知していたものの、心の準備はできています。
見たところ2回目の方がスムーズに進んでおり、1匹目と同じテクニックを使用して、子熊をボートに乗せました。
漁師はほとんどのエネルギーを使い果たしましたが、なんとか両方の子熊をボートに乗せます。
クマは漁師に目を向けて、激しく呼吸をしており、一方漁師たちは「救ったはいいもののこれからどうすればいいのか」と疑問に思い始めます。
成功を祝った後、2人はクマを陸に戻すという次のステップについて考える事にします。
休む暇はほとんどなく2人とも疲れ果ていたものの、危険はまだそこにありました。
子熊たちはまだ疲れ果ててボートの隅で震えていますが、エネルギーを取り戻して襲ってくるかもしれない状態に戻るまでどれくらいの時間がかかるでしょうか?慌ててパニックに陥ったら、まだかなりの被害をもたらす可能性があります。
恐らく子熊たちにとって人間と触れ合うのは初めての事、さらに子熊たちが母熊に会いたいと強く思っているのは間違いありません。
漁師が決断を下す時が来ました。漁師たちは子熊との固い絆を信じ、どんな結末を迎えようとも信じることに決めたのです。
母親が近くにいて、子供を待っていることを漁師たちは理解し、必ず母親の元に連れ戻す方が良いという決断をしたのです。
ここで浮かび上がったもう1つ疑問は、母親はどこにいるのか。救助中に彼らは母親を見失ってしまったのです。
彼らは最後に母熊を見た場所を探し、漁師の一人が、母熊がいた近くに岩があった事を思い出し、海岸に向かいます。
リスキーな計画
彼らはこれが計画の中で最も危険な瞬間であることを理解し、ボートを陸に着かせたら、子熊を注意深く追い出そうとしますが、母親はどこにも見当たりません。
するとどこからともなく、巨大な動物がボートに向かって走っているのを確認、母熊が子供を探していたのです。漁師たちは急いでボートに戻ります。もちろん漁師たちは善意の気持ちを持っていますが、母熊がそれを理解しているかどうかは誰にも分からないのです。
命がけ
クマに背を向けて、漁師たちはボートに戻り、モーターを始動しようとすると、クマが近づいてくる音が…岸から走り去ったとき、心臓はバクバク、そこで漁師たちは初めて振り返ったみると…
そこにいたのは、3匹のクマ、ボートを見渡しています。警戒している母親は、2匹の子を横に置いており、漁師はそこでこの母熊は二度と子供を放っておくことはないだろうと悟ったと言います。
Leave a Reply